誰かの背中にギリギリ届かないでほしい言葉
どうしても年を食っているので、俯瞰で物事を見ることが多い。
まだまだ若造、視界こそ世界な側面が未だ多く残されているには違いないとはいえ。
入部当初、技量はないくせに年だけムダに重ねていたせいか、視点切り替えスイッチだけは立派なものがついていて、当時から今に至るまで、様々な側面からあの部活を見てきた、と思う。
しかしそれは、集団全体の話。船がどこにいてどこに進むのかは見えていても、船員たちの思惑はほとんどわからない。
自分が見ているのは可愛らしくはしゃぎ、かっこ良く演奏している姿だけなのだから。
何を思っているのだろうと思いを馳せても、実情にはきっとかすりもしていないのだろう。
振り返ってみる。今、さっと。
話していて楽しかったな、という思い出ばかり。
あのニヤッとした笑顔とともに、これからも胸にしまっておく。
振り返っている。今、きっと。
それでも、文字に起こすには膨大で複雑な出来事と感情を抱いたまま、前を向いて走り出しているんだと思う。
走り出せるチカラに、私は惹かれる。
ふと後ろ髪をひかれることがあるかもしれない。
でも後ろ髪をなびかせているのは、仲間が送った追い風だ。
思う存分暴れてきてほしい。
今こちらから見えるのは、何か抱えていたとしても、それに気がついたときにはもう颯爽と去ってゆく後ろ姿だけ。
でも、その顔はきっと笑っているはずで、やっぱり素敵な人だな、と思う。
なんだろうね。
ほんの微々たる時間しか会っていないはずなのに。
こんなに寂しく感じるのは。
また会える日まで。
「お久しぶりです!先輩おごってください!」と笑顔で言われるその日まで。
どの立場から言っているのかもわからない謎の先輩もひとり、あなたを応援しています。
いつかまた、合宿ではついぞ聞けなかった魔女宅のソロをもう一度聴かせてください。
本人に向かって投げていますが、本人の背中には届きませんように。