色メガネ売場

目の届くかぎり広く、手の届くかぎり深く

京アニのお祭りに参加してきた

10月28日、みやこめっせで開催された京都アニメーションのファン感謝イベントに行ってきた。

 

少し前の話にはなるが、振り返ってみる。

 

 なぜ京都アニメーションを追っているのか

アニメーションには興味のなかった私だが、「響け!ユーフォニアム」という作品をきっかけに京都アニメーションとの出会いを果たし、ファン感謝イベントに足を運ぶまでになった。なにが私の心を掴んだのか、少しばかり考察するところから始めよう。

 

京都アニメーションは制作工程のほとんどを自社のスタッフで行う。これはわりと特殊な事例で、ほとんどのアニメーション制作会社は外部スタッフを招聘することが多い(わかりやすいところでいえば監督を"呼んでくる"、という形)。監督、演出、そして絵に落として作品として完成させるといった作業を内部スタッフだけで完結させることで、作業の効率化やイメージの統一がなされている(と言われている)。この作業体制で制作された作品は非常に美麗でよく動き*1、高い水準を維持し続けており"京アニクオリティ"とも呼ばれ固定ファンが多いことでも知られる。

私は、このまとまりのある作業体制によってかよらぬかは定かではないが、絵コンテや演出を手がけるクリエイターの並外れた技量や才覚、隠された意図を作品の中から感じとることができるので、お話自体はもちろん"誰がなにを考えて作っているのか?"を考えながら見るのが好きだ。スタッフロールも、こんなに素晴らしいものを作った人は誰なんだと気になってしまう性質上、凝視しては特に良いと思った回のスタッフの名前を覚えることもある。

 

では、なにが良いんだろうか。他のアニメーションに詳しくないので比較はできないが、この会社はあらゆる意味で"細かい"描写が得意である。

 

スタッフが皆高い画力を有しているため、そこここで当たり前のように細かい動きがみられる。さらに、表情の機微を描き分けてしまう。笑顔の中に一瞬見せる哀しみや、微妙な表情の移りかわりすらも絵として出力することができる。その上、登場人物の台詞による説明が一切ないことすらある。絵だけで視聴者に伝わることを前提とした画面作りからは、自社の画力に対する絶対の自信がみてとれる。

こだわるところにとことん徹底する姿勢は、小物などの設定にもみられる。例えば「響け!ユーフォニアム」という作品では大量の楽器が登場するが、それら一つ一つに対して膨大ともいえる資料が存在する。

http://giga-images-makeshop-jp.akamaized.net/kyoanibtc/shopimages/6_000000000873.jpg?1462165184

設定資料集のサンプルであるが、ひとつひとつ細かく描かれていることが分かる。

さらに恐ろしいのは、本編中においてもこれらの楽器が一本一本ほとんど手描きであるというところ。最近はCGの使用もよくみられる中で、手描きを選択するのもかなりのこだわりといえよう。

もう一つ例を挙げるなら、水泳を取り扱った「Free!」という作品の水しぶきもすべて手描きである。すごい。

 

絵コンテについても同様である。配置、構図、明暗などを巧みに操り、ひとつの画面の中に情景や感情を詰め込んでいる。考察記事を読むと、ここまで考えてこの絵を構成したのか、と嘆息することもしばしばである。

 

アニメーションは総合芸術だ。そもそも私は絵を描くことが不得手なので、静止画一枚、原画一枚でも感服のひとことであるところを、それが動き、感情を持ち、生き生きと世界に存在している様子を見ると、並大抵の感想で片付けられる感動ではない。背景や音楽、吹き込まれる命とも形容される声と一体化して雄弁に物語られるストーリーは、よく考えなくてもおびただしい積み重ねの成果であることを認識させられる。

 

よく言われることだが、"撮れてしまう"実写映画やドラマに対してアニメーションは"撮らなくてはいけない"。実写では、ロケに行けばその場所の風景や音や光の差し込みなどがあらかじめ"有"り、その上に俳優の演技、時にはアドリブなどあらゆる要素が偶発的なものも合わせてカメラの中に収まるが、アニメーションにおいて始まりは"無"である。音もなければ光もない。そしてなにより、偶然がない。無の上に世界を細部に至るまで構築し、キャラクターを動かすという点では実写よりも難しいと思う。ここにおいて、細部へのさまざまなこだわりを持って作られ、実写とひけをとらない密度の濃い世界を画面の中に構築できる京都アニメーションが制作する作品を、私は好きになったのである。

 

繰り返すが、他のアニメーションについて私の知識はあまりにも乏しい。上にあげたこれらのトクチョウは他との比較からみえる"特徴"ではなく、あくまで私が感じた"特長"であるということをご理解の上読んでいただければと思う。

 

いざ、みやこめっせ

旅程の都合上、1日目のみの参加となった。下見はバッチリで道に迷うこともない、なぜなら先週向かいの建物で定期演奏会を鑑賞したからだ。2週連続で東京と京都を往復するのは、はたから見れば頭が悪い行為であることに違いはないだろう。

 

受付のあと、バッジを渡された。本イベントのメインポスター(?)でも使われているキャラ大集合の絵だ。これを目印にイベント参加者を見極めるらしい。おとなしく服につける。

このような大規模イベントに参加することはめったにないが、それでもまず物販!という人間の本能で到着した物販エリアには販売前から既に長蛇の列が。そこかしこにTシャツや缶バッジなどのアイテムを身に着けている人がたくさんいて、ここにいる人達みんな同じものを愛しているのかと思うと安心と不安と恐れ(畏れ)とが入り交じった。

販売開始後、どんどん捌けていくタペストリー。30分ほどでヴァイオレット・エヴァーガーデンタペストリーが完売アナウンスが入り、どよめきが物販エリア中に広がった。マジやばくね?

 

遠征に手一杯でグッズにお金をあまり割けなかったが、パンフレットと楽器くんTシャツを購入。ユーフォ2期7話の駅ビルコンサートで部員が着ていたデザインを模した緑色のTシャツも欲しいなあ‥‥

クリアファイルがガチャ仕様で、お目当てのキャラクターを求めて交換相手を探す人もいた。あの中にコンプを目指す伝説の少女Aはいただろうか。

 

続いて、地下の展示コーナー。作品ヒストリーゾーンには登場人物や舞台設定、はては小物に関する京アニクイズがあったり、アフレコ台本とともに各作品の要職スタッフさんのコメントがあったり。「ユーフォ」コーナーにはアノ曲の譜面も飾られていた。あと、キャラクターの身長比較が面白かった。凸守はチビじゃないデース!

 

スタンディングゾーンにはキャラクターのパネルがズラリ。オンエア当時の垂れ幕も各種揃っており、いろいろな作品を作ってきているんだなあという感慨が。お隣の"今!!"ゾーンには作業中の机を再現したものが作品別にいくつか並んでいて、

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中二病でも恋がしたい!」とか、

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響け!ユーフォニアム」とか。公開中の劇場版最新作の新規カットの絵コンテなんかも置いてあった(中は見られないけれど)。

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原画一枚一枚が芸術ですね。

 

レイアウトパネルゾーンは作中で登場した背景が巨大パネル化し、その前で写真が撮れるというもの。ひとりで踏み込むのは気が重い、とあたりを見回すと、

 

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まっがーれ↓(ピンぼけが過ぎる)
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バルサミコ酢ー!

というように京アニが過去に手がけた作品のポスターが全て貼ってあった。AIRからCLANNADからハルヒかららき☆すたからけいおんから、最新作までズラリと。それはもう、壮観だった。

 

次に足を運んだのはOP/EDゾーン。ここにはOP/EDの絵コンテと原画が掲示されている。じっくり見たい人が多く、見学まで少し並んだ。

ユーフォ1期のOP、2期のEDをはじめ、メイドラゴンのあの"狂った"OPのコンテなど存分に見た。たまこまーけっとのOPのコンテが見られたのも嬉しかったなあ。細かいところまで見たかったが、時間と後ろの列の圧力に負けた。納得行かねぇ!

 

スタジオゾーンへ。ここではアニメーション制作の過程が見られる。目の前に広がるのは、来年1月放送の最新作「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の制作風景(のほんの一部)。原画、動画、仕上げ、背景、撮影と一連の工程を、それぞれ担当のスタッフがモクモクと作業しているところをジロジロと見ることができた。撮影の工程でAfter effectsを使っていて、映像をかじっているのでよく眺めてみたけれど、私の知らないAEだった。

 

ここらで3階に上がる。このフロアのメインは原画を始めとする制作資料の展示、なんと3000点以上。キャラクターデザインや設定資料、背景、そして原画、さらに各作品の冒頭10分程度にあたる絵コンテがズラッと並べてあった。ユーフォの変態楽器作画、中二病の戦闘作画、メイドラゴンのしっぽ肉作画(?)、こんなものではほんの一部も紹介できたことにならないくらい、とんでもない量の展示だった。しかし、ここに展示されているのはほんの一部なのだろう。あのクオリティの高い作品のために、クオリティの高い原画がこんなに必要なんだなと、普段流し見てしまうこともあるアニメーションの裏側の膨大な作業量を想った。

絵コンテも興味深く見た。ここからあの世界たちが羽ばたく、その地面を描くことのできるクリエイターさんたちはすごい。

 

その横には、京アニならびにアニメーションDoのスタッフがひとりひとり作製したメッセージカードがズラリ。幸せな気持ちになった。絵を描くというのは素晴らしい芸だなと実感した。武本康弘氏のカードが可愛くて好きだった。

 

時間がちょうど合ったので、新作オリジナルアニメ「バジャのスタジオ」も見た。はじめ、京都アニメーション本社を彷彿とさせる建物にかかっていた垂れ幕をみて「お?凸守のセルフパロディか?」と思ったらそんなことはなかった。しかし動きのひとつからバジャのモフモフ感というか柔らかさが伝わってくる。小林さん役の田村睦心さんが悪役で、あの低い声に魅了された。また見直せば新たな発見があるのだろう。

 

そして最後に向かったのがトークステージ。応募して唯一当たったユーフォのトークイベントである。生まれて初めての声優イベント、ともいえるか。

まず生・白石稔だー!となる。らっきー☆ちゃんねるでいじめられていた白石みのる(CV.白石稔)とどうしても頭の中で比較してしまう。京アニイベントの司会といえば白石さん、なのかな?

そしてメインキャラクター4人を演じる声優さんの登場。ニコ生やラジオで見せていたやり取りそのままに、明るく楽しくステージを彩っていた。関西弁かぶせとか、もはや懐かしい。

さらにシリーズ総監督の石原立也さん、シリーズ演出山田尚子さん、そして劇場版第2作の監督小川太一さんの登壇。出てきたわりにお話しする時間が少なくて残念だったが。こうして作品を作り見せてくれるトップクリエイターの姿をこの目で見ると、なにか頑張らなくてはなと思わされる。具体的なものは何もないが。

一番印象的だったのは、山田さんがふとした拍子に"山田パー"のポーズを取っていたこと。自然なタイミングだったので、あの特徴的な動きはご自身が驚いたときの動きを反映させたものなのだろうか、と邪推を重ねた。

リズと青い鳥」はこの時点だと絵コンテをひねり出してる、とのことだった(記憶はアイマイ)が、ここ最近特報とともに情報が解禁され始めた。楽しみが過ぎる。

 

ステージが終われば、私のイベントも終了となる。座席に上着を忘れ、ひとり順路を逆走する恥ずかしい姿を晒して立つとき跡を濁したが、全体を通して大満足のイベントだった。願わくば、あの資料たちをもう一度、できればじっくり見たいものだ。

 

さらなる作品の発展を願って、今はひとまず新作アニメーション「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」のオンエアを楽しみにすることとしよう。

 

以上、「私の時間を無駄にしないでいただきたい」と言われても仕方のない、つたないレポートでした。

*1:アニメーションとは思えないほどスムーズにキャラクターの動作が描かれている、というような意味。ぬるぬる動く、という褒め言葉がある