色メガネ売場

目の届くかぎり広く、手の届くかぎり深く

2021.3 見たモノ聞いたモノ

これを書いていたらゆるキャン△2の最終話を見逃しました。

見たものを一覧にして、感想を書きたいものだけ抜き出してテキストにできるような整形ツールがほしいですね。

 

ラジオ

不毛な議論乱入(2/27オードリーANN→3/3山里亮太の不毛な議論

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www.allnightnippon.com

2月27日のオードリーANNではオードリー若林さんと南海キャンディーズ山里さんの漫才ユニット「たりないふたり」の話題に。スタッフに対する山里の態度が妙だ、ウケや能力を若林さんと比べすぎて落ち込んだり、そんな姿を見かねてフォローに回ってくれるような、若林さんから見れば”山里寄り”のスタッフにすらなぜか当たりがキツくなってしまっていたりして、このままではユニット活動を続けていけないと話す。一度直接話をしたいところだが、不毛な議論は若林さんが毎週聞いている乃木坂46ANNと裏被りしているため、他局に乗り込んで良いものか迷っているところで放送は終了。

それを受けて翌週の不毛な議論では、冒頭から「大不倫をかました人のテンション」で延々と自分の思いをぶちまける山里さん。20分ほど後ろ向きなトークが続いたところで突如若林さんがブースに乱入。この乱入はスタッフを含め誰も知らなかったらしく、浮足立った雰囲気のなか若林さんがひたすら山里さんを諭すような展開に。3ゾーンほど話した後、CM中にブースを去るというなんともカッコいい立ち振舞いだった。

自分は99%タイムフリーで聞いているので、この乱入もマイナビニュース・ラジオのツイートで先に知ってから聞いた。もちろん面白いやりとりは先に知ったところで色褪せないけれど、こういったトピックスをリアルタイムで立会人となって目撃できたら何倍も楽しいだろうなと思う。

 

2021.3.11 サンドウィッチマンANN

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約10年前のANN特番の録音を未だに聞き返すくらいサンドのラジオが好き。東日本大震災から10年ということで一夜限りの登場、当時を知る人たちと電話をつなぎ、改めて記憶に刻んでいく。話のトーンを設定するのが難しい震災の話題が中心であるのに、暗くなりすぎず能天気にもならずという塩梅が相変わらずお見事。差し挟む笑いがあくまでも自然で、上滑りして聞こえない。ゲスト(ほぼ準パーソナリティー)の狩野英孝がまたいい味で、要所でオチを上手く作っていた。変な空気になる笑いじゃなくて、純粋なやりとりで笑いにしている狩野英孝を初めて聞いたかもしれない。

 

バナナムーンホワイトデー(3/12バナナマンバナナムーンGOLD

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先走る人たち、不思議なセンスの持ち主たち、金満に走った設楽さん、それらをセンスがないダメだダメだと散々笑っていたのに最後の最後でド級の謎プレゼントを渡してエラいことになる日村さん。

 

満島ひかり来襲(3/18ハライチのターン!)

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めったにゲストが来ないハライチのターンに突然やってきた満島ひかりさん。ハライチをボコボコにしてチャッチャと宣伝して帰っていった。宣伝していた江戸川乱歩のドラマは、「江戸川乱歩怪人二十面相、たしかにこんな変態じみた話だったな‥‥」と心から思える芸術作品だった。岩井さんも無様で良かった。

 

おじさんラジオ(3/24佐久間宣行ANN0)

news.1242.com

この3月でテレビ東京を退社する佐久間さん、会社員最後の放送はテレビ東京の先輩・伊藤Pと後輩・三宅Dをゲストに迎えて思い出トーク。すぐ「あのときはさぁ‥‥」と懐古モードのスイッチが入る伊藤さん、終始音を立てて空回りしていた三宅さん、どこまでも楽しそうな佐久間さん。改めて「テレ東っていい会社」を滲ませる放送。

 

ブレインスリープ(アルコ&ピースDC GARAGE)

www.tbsradio.jp

期間限定のタイアップコーナーで、リスナーの忘れてしまいたい記憶を成仏させるコーナー。オードリーANNの「チン!のコーナー」の現在のテーマが「その場から消えたくなった瞬間」で似たような系統だが、こちらにはより選びぬかれた精鋭が集まっていた。DCGARAGEは最近聞き始めたが、いい感じ。インターネットタトゥー多い。勇者ああああでも思ったけど、酒井さんの笑ってる音とか顔、好きなんだよな。

 

春のラジオ改編

ANNは全て存続、ANN0も木曜にマヂカルラブリーが新登場する以外は同じ顔ぶれ。1箇所入れ替わりがあるけど。聞いている番組が続くのは純粋に嬉しい反面、0(27時の枠)はフレッシュな顔ぶれが求められていたような‥‥と思っていたら、終了するミュ~コミプラスの枠(月~金24時から25時)に新規ANNブランドを立ち上げとの発表。ENHYPENは馴染みがないが、火~木はしばらく聞いてみようと思う。生放送なんだね。

ANNX初週の感想を追記

火曜(YOASOBI):清かった。ikuraさん→ayaseさんのパスが全然通らなくてむくれるikuraさんが可愛らしい。若い男女の話すラジオ、久しぶりに聞いたな。

水曜(フワちゃん):うるさい。初回で段取りを外してしまうところもあったが、毎打席フルスイングでメールを読んでてとても良い。回を重ねたらさらに大爆発すると思う。

木曜(ぺこぱ):キャラを入れない素のぺこぱ、これからもっと面白くなる予感にあふれていた。コーナーも楽しみ。福浦の応援歌、公共の電波から聞こえる日が再び来るとは。いい曲だけど。

 

 テレビ・映像メディア

ゴッドタン 壁ある芸人矯正セラピー野田クリスタル

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共演者との距離が縮まらない芸人が、ニセ番組収録の中で何も知らないターゲットと打ち解けられるか?というモニタリング企画。かまいたち編、劇団ひとり編(木下彩音さん、お名前覚えた)も素晴らしかったが、この野田クリスタル編も白眉の出来。途中からターゲットである小椋梨央さんが引っ張っていく展開になり、ふたりのコンビネーションがどんどん熱く高まっていく様には笑いつつも感動してしまう。ヒム子ドッキリを彷彿とさせるゴッドタンお得意の泣き笑いパターン、今回も素晴らしかった。

 

勇者ああああ 野田フレンドパーク

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3月で終わってしまう勇者ああああ。M1で優勝し凱旋を果たしたマヂラブが支配人となり、ゲストは野田ゲークリアを目指して戦うこととなる。野田ゲーのセンスが好き。M1前後でようやくマヂラブを知る。なんで今まで知ろうとしなかったんだろう、もったいない。(4月3日追記:ANN0も面白かった)

 

タモリ倶楽部 空耳アワー・スプリングコレクション

本編でも久しく放送されていなかった空耳アワーを一挙放出。ほどよくくだらない。

 

俺の家の話、そして鉄腕DASH

www.tbs.co.jp

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宮藤官九郎脚本、長瀬智也主演の「俺の家の話」。確実に老いていく寿三郎、危篤を迎えるも奇跡的に復活、そして‥‥。心のどこかでこのようなラストを迎えるような気もしていたが、実際に放送されると衝撃は大きい。劇中と劇外の出来事がリンクしていき、ドラマから引いてメタ視点になっても相似形になっていて、心憎い舞台の幕引きだったな。主演以外だと江口のりこ秋山竜次夫妻の間がうますぎてどちらも唯一無二だった。

そして鉄腕DASHは懐かしの3000歩企画に過去の名場面を絡めて放送。自分が見始めたのは2009年くらい。DASH村は安定期に入っていたが(元気な北斗も懐かしい)、DASH海岸はまだヘドロが海の底に溜まっていた。日本全国を回るバカ企画もまだたくさんやっていて、DASHガレージのワクワク感といったらなかった。ソーラーカーだん吉で日本を回る企画は、当時の幼い自分にはピンと来なかったが今見ればめちゃくちゃ面白いはず。リーダーと達也が毎週のように出ていて、たまに太一や松岡、そして長瀬が出ていると「おっ!」と少し嬉しかったのを思い出す。5人揃っているときはそれだけで楽しかったなあ。

数年の間に様相が一変し、TOKIOだけでは番組が回らなくなり、事務所の後輩が毎週出るようになった。小さくも大きな変化についていけない部分もあり、以前のように毎週生放送で欠かさず見るほどの熱意はなくなってしまったが、それでも応援したい気持ちはずっと持っている。今回放送終盤で5人の映像が「貴重映像」のように使われていて、このタイミングでしか”解禁”できなかったのだろうという思い、過去を過去として切り離せない自分や世間へのやるせない思い、それでも起きてしまった消えない出来事へのさらなるやるせなさ、いろんな思いが去就した。5人が写っているなんでもないシーンが、貴重だ特別だなどと大げさな装飾つきで流される必要などないはずなのに。本来動かされるはずのなかった感情が動いていることに、ほのかな悲しさがある。

鉄腕DASHは幸いにして終わらない。意志を継ぐ者とともに、新たな”開拓”も始まる。引き続き、見届けていきたい。長瀬智也の今後の活動も!

 

カルテット(2017)

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Prime Videoでダラダラ視聴。このドラマを見て以降、吉岡里帆が何に出ていても目が笑っていないように見えてしまう。

 

宇宙よりも遠い場所(2018)

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https://www.netflix.com/jp/title/80995912

なにかを変えたい女子高生たちが南極観測隊の一員として南極を目指す。各話ごとにほとんど明確な課題設定があり、解決・解消に向かう中で山をしっかり作りつつ、物語全体のより大きなクライマックスに向けて駆け抜けていく。隙のない脚本と、引き締まった演出がカッチリはまったときの爽快感。いい作品でした。井口裕香さん上手。

 

ゆるキャン△ season2(2021)

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B08S6K5CCL/ref=atv_dp_share_cu_r

ふにゃ~って力を抜き特に何を考えるでもなく見られるという点では、この作品中で頻繁にオマージュネタが登場する「水曜どうでしょう」に近いものがある。藤やん・うれしーも登場し、前期よりどうでしょうネタが多かった。

 

秒速5センチメートル(2007)

WOWOW新海誠特集で放送されていた。他人の出来事は美しく見える、思い出は美しく見える、が重なるから他人の思い出はことさら美しく見える。という思いを美しい背景美術で増幅させてくるので、他人の走馬灯をスローで見ているような気分になった。登場人物は決して出来事を過去を語っているわけではないのだが、主体と客体の境界を曖昧にさせる淡々とした語り口がそう感じさせる。またこの作品を見たくなるときが来ると思う。

 

言の葉の庭(2013)

視聴媒体は上と同じ。雨が降る日だけ会える2人は七夕のよう。「秒速~」と比べると(比べていい作品なのかはともかく)、登場人物の内なる炎が感じ取れるぶん自分ごとのように感情を動かされることもあった。届かないかもしれないことを頭のどこかで冷静に見てとりつつも、目指す頂に向かって突っ込んでいく。こんなに劇的でなくていいから、自分も少しはそんな姿勢でありたいな。

 

J-WAVE トーキョーギタージャンボリー2020

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ライブの存在を知らなかったが、偶然BS朝日でその模様を放送していたので視聴。いいメンバーだったなあ。奥田民生奥田民生で、森山直太朗ハナレグミの「どこもかしこも駐車場」にグッと来て、山崎まさよしの「セロリ」で嬉しくなった。

 

音楽

パスピエ

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(サビ前のギターがフジファブリックの「記念写真」と似ていて、どっちも好き)

 

名前だけ知っている状態が長らく続いていたが、サブスクの恩恵でこの程ようやくちゃんと知ることができた。調べてみるとフジファブリック・フォロワーのメンバーがいらっしゃるようで、なるほど確かにキャッチーなフレーズはフジファブリックを髣髴とさせる。いろいろ聞いてみよう。

 

フジファブリック『I Love You』

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最新アルバム。YOASOBI・ikuraをゲストボーカルに迎えて男声と女声のハモリが気持ちいい「たりないすくない」(加藤さん作詞作曲なんですね)、胃がねじれる「楽園」。フジファブリック、地続きに歩いていたら別世界にたどり着いていたイメージ。

 

赤い公園「オレンジ」

言ったところでどうしようもないことだが、これから聞いていきたいバンドのひとつで、近いうちに聞こうとマイミュージックにアルバムを保存していた。切り離して、切り離して、とってもいい曲。最後のサビの前のホールトーン(Bb-C-D-E-Gb-Ab-Bb)で心がどこかに飛んでいきそうになる。

 

aiko『どうしたって伝えられないから』

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手元に置いておきたい、シャッフル再生した曲の雰囲気にその日の暮らしを合わせてもいいアルバム。

 

minuano『蝶になる夢を見た』

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よく聞いているバンドLampの姉妹バンド?で、Lampでボーカルの榊原香保里さんがメインボーカルを執っている。存在しないめくるめく世界への片道切符。

 

有川浩図書館戦争

食わず嫌いしていたのだが、薦められて挑戦。コメディ要素に若干腹部膨満感はあったものの、シリーズの結末が気になる。ゆっくり読みます。

辻村深月「朝が来る」

不妊治療の前検査で睾丸にメスを入れるくだりを読んだ瞬間にモノが縮み上がってしまった。救いのあるラストが用意できるのは物語の良いところでもあり悪いところでもある、と思うのは穿ち過ぎか。

今村夏子「夏の子」

怪しげな宗教に傾倒していく両親、訝しがる学校や親戚、娘は何を思う。平易な文章で娘=主人公の違和感が引っかかりなく読み手に共有されていく。宗教でなくても、気づかずになにかを色メガネで見ているかもしれない。自分があらゆる色メガネをかけないように抵抗し続けるのは、ひとりの人間にはキツすぎる。見ている景色が色メガネ越しのものであると認識し続けていくほうが、身の丈に合っている。

 

その他

リングフィットアドベンチャー

ひょんなことから手に入った(転売ではない)ので、ほとんど毎日やっている。やろうと思っても習慣になければ踏ん切りがつかない運動も、ゲームになるととたんに楽しくなって続けられるので、大発明だと思う。スムージー作るの簡単にならないかなー。

 

野球開幕

9回打ち切りが開幕直前に発表されるなどゴタゴタしたが、日程は延期されずに開幕を迎えた。ロッテやDeNAが連敗続きになるとは思わなんだが、星回りは直に良くなるような気もする。143試合も負け続けていられない。ヤクルト、なんで五分なんだ?(4月3日現在)

2021.02 見たモノ聞いたモノ

ラジオ

 

星野源のANN(ニッポン放送、2月2日)&バナナマンバナナムーンGOLDTBSラジオ、2月5日)

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ANNの誕生日スペシャルに日村さんが前フリなしのキングボンビーで登場するもスベり、そのあとずっと変な空気だったのがよかった。バナナムーンGOLDでも終始反省モードで、ツメアマ太郎が登場することに。

TBSラジオのホームページにニッポン放送・イマジンスタジオの写真が載っているのに驚いた。

 

伊集院光 深夜の馬鹿力TBSラジオ、2月8日)

笑点ボツお題カルタ」、個人的にツボ。

 

爆笑問題カーボーイTBSラジオ、2月2日)

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冒頭にターン収録終わりのハライチ(宮嵜Pのtwitterで事前に登場予告されてたけどな)、そのあと鬼越トマホークが入れ替わりゲストで丁々発止の言い争い。言えば言うほど身を削られていくお三方の体の張りぶり。

爆笑問題カーボーイTBSラジオ、2月9日)

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TBSから安住アナ・外山アナ(ワンちゃん)・良原アナ(アミーゴ)登場。日曜サンデーは聞いていないので太田さんとお三方の関係性はさほど知らなかったが、めちゃくちゃ面白かった。太田さんの無茶撃ちを躱しつつ行くときは行く安住アナ、手綱を握ったりノッてみたり聞き役も一級品の外山アナ、その中でまともであることが異色であり個性になる良原アナと、バランスのよい配置でずっと聞けた。中でも外山アナの仕事ぶりが印象的。深夜ラジオとは思えないキッチリした進行も新鮮で良かった。来週は来週で水曜JUNKから山里亮太氏、木曜JUNKからおぎやはぎのお二人がくるという豪華ぶり。イレギュラーが生んだスペシャルぶりを嬉しく思うとともに、田中さんと2人の”通常”放送も恋しくなる。どちらかに寄らず両輪だからこそ大きく回っているのがすごいなと。

(追記)

項目には立てないが、翌週(2/16)のおぎやはぎ・山里回も(グーフィーだ!)、そして田中さん復帰回(2/23)も面白かった。ゲストが来るとその後のCD〇〇まで美味しいという、鍋からの雑炊パターン。今月は話題に事欠かなかったな。

 

ハライチのターン!(TBSラジオ、2/25)

www.tbsradio.jp

東急ハンズスポンサー月間のフィナーレにふさわしい大団円。ネコちゃんニュースもハネてた。

 

オードリーのオールナイトニッポンニッポン放送、2月19日)

L-1グランプリ。終わってみればまったく裏に入らず、王道ネタレースに。審査員紹介での「埼玉県所沢市の春日さん」がなぜだかめちゃくちゃ面白かった。

 

テレビ・映像メディア

麒麟がくるNHK、2020)

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人生で初めて大河ドラマを通して見た。面白かった! 主役の長谷川博己さんはもちろん、織田信長を演じた染谷(そめたに)将太さんのたたずまいが素晴らしかった。岡村隆史さん(もともと彼のラジオと、あと伊集院さんのラジオで話題になっていたから見始めたのだ)も平民を浮きすぎることなく演じていて良かった。最初は途中断念も頭にあったが、美濃編終盤の本木雅弘さんの怪演あたりで視聴継続を決意し、途中何週か置き去りにしたときもあったがなんとか最後まで見ることができた。

www.nhk.or.jp

次の「青天を衝け」も面白そうなので見てみようかしら。

(追記)1・2話見た。うーん‥‥。話として面白くなってくるのはもう少し後だろうから、引き続き見てみる。

 

いだてん(NHK、2019)

(公式HPが消滅している‥‥。インタビュー読みたかった)

昨年の再放送を録画したものの見る機会を逸していたが、「麒麟がくる」完結に際して視聴を決意。最初こそゆっくりしたペースで見ていたが、ストックホルムオリンピック本番のあたりからどんどん面白くなり、約1週間で全47回視聴に至った。脚本とキャスティングと演出と音楽が渾然一体となってドラマの面白さを幾重にも増幅させていて、個々人の具体的な功績を挙げて称えることが難しいほどにまとまりとしての制作チームの圧倒的な凄さを感じた。

扱われた20世紀初頭~半ば(1960年代)という時代、現在にもっとも近い”歴史”は、その時代を生きていない自分の中にも歴史の燃え滓が残っている心地がするほどに今と地続きで、今に残る当時の傷跡の疼きが生々しく感じられる。まだ”歴史”になりきっていない、火成岩になりきっていないマグマのまだ熱い部分を、虚構ないまぜといえどツブサに描写し、ひとつの料理として器に盛り切ったことに感服した。

このドラマは「実話をもとにしたフィクション」だが、フィクションを通して”少し昔”が”今”に語りかけてくるような構図となり、ときにゾッとするほどの符牒を見せる。劇中劇のような格好で歴史が語られ、その”劇”と”劇中劇”のそれぞれのドラマの中で、あるいはその枠を飛び超えて縦横無尽に仕掛けられた構図の重なりが、次なるドラマの推進力となっていく。そしてそればかりか、さらに物語の内(=虚構)と外(=現実)もまた重なってゆく。回が深まるごとに互いの境界がぼやけて見えなくなっていくのはなんとも奇妙な心地だった。見ていて何度も泣いてしまったが、泣きながらこれは何に対する涙なのかわからなくなることもしばしばあった。

最後に。三宅弘城播磨屋を最初から最後まで堪能できたのは再放送がゆえの幸運だったと思う。

 

ドロステのはてで僕ら(映画、2020)(トリウッド下北沢)

www.europe-kikaku.com

超ロングラン上映で助かった。小さなきっかけを転がしていった”果て”は大騒動だけど、最後に得たものは小さくも確かな手応えで。緻密な台本と緻密な芝居、そして緻密な撮影を細かく細かく積み重ねてできる、作品という”未来”を堪能した。芝居の大きさや舞台設定、そして出てくる空間の外にほとんど影響を与えずに騒動が完結しているところも含めて、劇団発の映像と感じさせる部分が随所にあった。女性の方々がキュートでした。

トリウッド下北沢には初めて行ったが、ほかにも面白い作品がやっていて、他のミニシアターも含め今後ともチェックしたいところ。

 

ゴッドタン 腐り芸人オンラインセラピー

www.tv-tokyo.co.jp

有料配信ライブで「腐り」をテーマにトーク。『絶対にピー音が入らない』と煽っていただけに、ゴシップ的な面白さに期待していた人もいたみたい。確かにテーマから見たら消化不良感は少しあるかもしれないけど、脱線した話も面白いんだし、このメンツの話が聞けただけで十分以上の面白さ。良かったです。松丸さんもさすがでした。

 

わしゃがなTV(ゲスト:星野源

中村悠一マフィア梶田Youtube番組。星野源の手広さは事あるごとに感じるが、今回もまた。氷菓らきすたなど自分の好きな作品が出てきて嬉しかった。やっぱり中村悠一はいい声だなあ。

 

タモリ電車クラブ持ち込み企画第2弾!俺の鉄ネタ臨時列車編

どのネタも良かったですね。鉄道ライブカメラダービーは一般人がやっても盛り上がりそうだが、知識がないと面白がれないのかな。

 

全力!脱力タイムズ(フジテレビ、2月26日)

 ワンマンショー、キョトン顔、そして溜めておいての大変身、密度の濃い40分。

 

NHKスペシャル 2030飽食の悪夢

www.nhk.jp

 これを見た翌日にスーパーに行ったら具合が悪くなった。

手に届く距離に置き続けることの代償。

 

音楽

「Music&Discoveries」で聞いて気に入った曲が多い。「songwhip」というストリーミング配信一覧作成サービスを使ってみたが、なぜだかAmazon musicが引っかからないことがある。

YONA YONA WEEKENDERS「唄が歩くとき」

songwhip.com

 

SPECIAL OTHERS

songwhip.com

インストゥルメンタル多めのバンド。

 

NONA REEVESガリレオ・ガール」songwhip.com

「佐久間宣行ANN0」のジングル曲のひとつ。めちゃくちゃ良い。NONA REEVESだと

「Mr. Melody Maker」も最近よく聞いている。

 

Perfumeチョコレイト・ディスコ Stage Mix 〜お願い 想いが届くといいな〜Ver.」

youtu.be

聞いたことないMixだった。低音が主張していて良い。ライブ映像を見るたびに、一度でいいから現地に行ってみたいと思う。去年2月に中止になった東京ドームのライブのチケット、まだ捨てられていない。

 

The Weeknd (feat. Daft Punk)「I Feel It Coming」

www.youtube.com

Creepy NutsANN0のED前ジングルに使われているので冒頭のみ聞き覚えがあった。しかし、世界でこんなに再生されているのになんで今まで聞いたことなかったんだろう‥‥。

Daft Punk鉄腕DASH内のコーナー「新宿DASH」のテーマ曲として「Contact」が使われていて、それをきっかけに借りた「Random Access Memories」を何度も聞いた。なぜか「Instant Crush」がとても好きだったな。

 

米澤穂信「王とサーカス」

booklog.jp

読後感が「米澤穂信を読んだなあ」となる。登場人物たちが抱える複層的な事情を、小出しにしつつ描くのがうまい。言葉の切っ先がいつ登場人物とその背後にいる読者に向くか、いつもヒヤヒヤしてしまう。

 

プロ野球名鑑2021

欠かさず買っていた名鑑も、2020年はついに買わずじまいだった。9年間同じ出版社の発行するものを買い続けてきたが、これを機に別の出版社のものに乗り換えてみることに。名鑑が本屋に並び始めると、春ですね。

 

その他

相鉄線に乗った

www.sotetsu.co.jp

もともと別の目的地を目指して東急東横線に乗っていたが、寝過ごして気がついたら横浜駅に着いていた。もともと大した用事ではなかったので、引き返すぐらいなら今まで乗ったことのない相鉄線に乗ってみることに。駅案内の洗練具合、相鉄カラー(YOKOHAMA NAVYBLUE)、堪能しました。

2021.01 面白かったモノ

メモなどひとつも残していないが、思い出せる範囲で書いてみる。

あくまでこの月に接したモノなので、はるか昔の作品もたくさんある。

 

ラジオ


2020-2021年越し特番『ハライチのタァァァン!!』(TBSラジオ、1月1日)

www.tbsradio.jp

木曜深夜の1時間番組「ハライチのターン!」から年越し番組の担当として(おぎやはぎに)選ばれたハライチに加え、松本穂香さんを加えて3人で3時間生放送。時間が長くなっても変に浮かず(特番用のテンションではなく)ターンの空気と地続きで、それが嬉しかった。昨年メガネびいきのピンチヒッターを担当していた回も良かったし、今後にも期待してしまう。

 

オードリーのオールナイトニッポンニッポン放送

www.allnightnippon.com

クミさんからのLINEを頑なに返さない若林さんの下りが好き。あと、波紋を呼んだ春日さんのヒルナンデス腹痛事件。

 

Memories&Discoveries(TOKYO FM、火~木4:00)

audee.jp

早朝の音楽番組。今年から声優の早見沙織さんがパーソナリティを担当するというニュースを見てなんとなく聞いたところ、選曲がいい感じなのでマメに聞いている。クラシックのコーナーも知識のない自分には嬉しい。AMの深夜ラジオばかり聞いているので、たまにFMを聞くと「CMが少ないな!」と変なところに引っかかってしまう。

 

佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)リスナー小感謝祭2021~Believe~(ニッポン放送、1月11日)

event.1242.com

東京国際フォーラムで行うはずだったイベントが中止になり、代替としてイキオイで開催されたオンラインイベント。母がヘビーリスナーなので視聴チケットを買ってしまった。開始直前に入ろうとしたらぴあのcloakが落ちて十数分更新を押し続けるハメに(サクマックスリローデッド)。1万2000人集めてwebサイト落とす佐久間さんすごい。ゲストの矢作さんとの昔語りが面白かった。矢作さんはやはりカリスマ。


テレビ・動画メディア

 

池袋ウエストゲートパーク(ドラマ、2000年)

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原作は読んでいたものの、ドラマ版に触れたことはなく長らく伝説の存在だった。TVerで配信されていたので視聴。渡辺謙の厚い芝居、阿部サダヲの軽薄な感じ、チョイ役の皆川猿時など堪能しつつ、池袋西口公園をはじめ当時の池袋が映像内に保存されていて背景もじっくり見てしまった。昨年アニメ版も放映されていたが、そちらは見ていない。ちょっとマコトが格好良すぎた。

 

SPEC(ドラマ、2010年)

www.amazon.co.jp

なぜか「サトリ」の存在だけ知っていたこのドラマ、いまさら視聴。刑事ドラマしつつ最後まで二転三転する展開が面白かった前半から異能力バトルが本格化する後半まで、最後まで見る気を引っ張ってくれる内容で良かった。この続きについてはあまり良い評価を聞かないので、最後まで見届けようかここで思い出に仕舞っておこうか迷っている。

 

俺の家の話(ドラマ、2021年)

tver.jp

宮藤官九郎脚本ということで見ている。なんの因果か池袋ウエストゲートパークの主演とSPECの主演が出演している。西田敏行があまりにも上手で、被介護所作の演技の境がわからなくなる。無論わからなくていいのだが、ご本人はどうなのだろうといらぬ考えが働いてしまう。

 

魔法少女まどか☆マギカ(アニメ、2011年)

※リンク(Netflix)

おぎやはぎのラジオで過去に取り上げたことがあるということしか知らなかったが、放映10周年ということをあちこちで見たので視聴してみることに。その周年祝いの中で物語初期にして大きな転換点となるあのネタバレを踏んでしまったので、新鮮に驚けなかったのは少し残念。しかしどう転んでもおかしくないとずっと思わされる緊迫感で最後まで一気に見た。とても良かったが、もう一度見るのがツラい。

その後メガネびいきの過去放送も掘って聞いた。声優をゲストに呼んだラジオコント。日頃異なるジャンルがいい塩梅に絡み合って面白くなっていた。

 

ゴッドタン 芸人マジ歌選手権(2020年)

放送は昨年。フット後藤さんの新古今和歌shootingのリズムが気持ちよかった。これは贅沢で傲慢な話だが、だんだん綿密な打ち合わせと作り込みが背後にあるパッケージであることが浮きだって見えてくるようになって、それがなにかとズレているような気もする。そこを隠す面白さもあったような。アップデートされているマジ歌をうまくのみ込めていないのかも。なんにせよ、面白いのだが。

 

水曜どうでしょう 2020最新作

ケーブルテレビの一挙放送を録画。往時の、勢いで押し切り乱高下するテンションに任せてというスタイルではないが、あの座組で醸してきた空気が年を重ねたらこんなフレーバーになった、というのを心地よく受け入れられた。大泉さんがどんなに年寄りになっても絶対に最年少のままなのが、当たり前のことだけど良いなと思う。

 

しゃべくり007(2月2日)

さっき見たが、今月末にはどうせ忘れているのでここに書く。アンタッチャブルがゲストで、知らない人は置いてけぼりをくらいそうな内輪トーク。昨年くりぃむしちゅーANNの過去回3年分を3ヶ月ですべて聞いたので、その時に話していた関係性が今でも忘れられずに続いていてなんだか嬉しかった。


 

ノルウェイの森村上春樹

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ここ数年少しづつ村上春樹作品を読んでいる。「ダンス・ダンス・ダンス」が今の所では一番好き。「ノルウェイの森」では劇的なできごとは少なく、人々が淡々と死んでいったり生きていったりする、その湿度の低さが肌に合った。

 

蜜蜂と遠雷恩田陸

booklog.jp

最新の話題作を避け、図書館で借りられるくらいに少し前の本屋大賞ノミネート作品を借りて読んでいる。この本は文庫で上下巻のボリュームがあったが、サラっと読み終わってしまった。読んでいて引っかかりのない文章で、湯を浴びるように読める。身を切るような一瞬にぞくぞくする音楽体験は本当に気持ちがいいが、体を駆け抜けていって掴めない、言葉にして伝えることが難しい。その描写が巧みで、筆を振るように言葉を重ねて感じた想いを描いていく筆致が見事。映画化されたようだが、どう映像化したんだろう。

国鉄道地図帳(昭文社

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地図帳+鉄道路線図という、自分が長らく求めていた本。廃線跡や鉄道史跡が地図上で一目瞭然なのがステキ。パラパラめくるだけで楽しく、旅行気分になれる。そして長旅を想像し、心なしか腰が痛くなってくる。

お知らせとはほど遠く

ワケあって、noteを始めた。

note.mu

 

居住地が一時的に変わるので、思うところがあったとき用の、いわばメモのようなものだ。

こちらはもう少し”熟成”というか、じっくり考えたことを、ゆっくり気まぐれに文字に起こしていけたらと思っている。

というわけで、節操なく発信の場を増やしてしまったが、なにとぞご愛顧のほど。

文無しが高校野球を見に行った

この記事をいま、静岡県西部の浜松駅付近で書きはじめた。書き終わる頃に、東西に延々と長い静岡県のいったいどこにいるのか‥‥一刻も早く、脱出が望まれる。

 

夏の高校野球、その代表大会が阪神甲子園球場にて始まった。初日の試合をテレビで見ていたら、なんとはなしに"観戦欲"とでもいうべき感情が湧いてきた。どうせ東京の居間でダラダラとトロけているくらいなら、うだるアルプス席でタラタラと汗かいているほうが良いだろう。

しかし、立ちはだかるはオカネの壁だ。毎度のことながら、ないものはないのである。

そこで、できうる限りで費用を抑えつつ「甲子園での野球観戦」を達成するべく、ひとり家を飛び出した。

 

準備

旅行にかかる費用を大別すると、交通費・宿泊費・食費・遊興費・土産費とでもなろうか。

各ステータスのバランスをどうとるかで旅行のパッケージ、色が決まる。総ステータス値、これが予算になるわけで、その中で食費にたくさん振り分けるか、遊興費に多くを投じるか、それは人の感覚、“旅行に求めること”に大きく左右される。

今回の場合は、“お金をかけない”を追い求めてステータスを振るわけだが、総ステータス値が貧弱だから、振り分けの自由はほとんどない。そんなキュウクツな旅の何が楽しいのか、と思われる向きもあろうが、限られた中でのやりくりというのは案外と面白いものである。大いなる制限の中で、大いなる楽しみを発見するべく、ときに攻め、ときに守り、見知らぬ街を冒険するのである。家計におけるやりくりだと、人生という名のモンスターがねちっこく絡んできてなかなか冒険できないが、たかが旅行であるから、多少失敗したところで、フトコロが鈍く痛むだけで済む。日頃の疲れを癒やすような、なにもかもがゼイタクな異世界でトロッコに揺られゆっくり過ごすのとはまた違う、ちょっとだけスリルのある、まさに冒険である。

だから、疲れる。これは避けられない。あと、お金を使わないかわりに、時間を湯水のように使う。世の中のお金の多くは、時間を短縮するのに使われているからである。

疲れてもいい、時間がかかってもいい、とは若者の特権である。若いうちに冒険に出かけるのは、悪くない経験だと思う(金欠が理由ってのは、ちょっとカッコ悪いけどね)。

 

というわけで、交通手段は(皆さまのお察しの通り)青春18きっぷで各駅停車。宿はドミトリー、食事は適当、甲子園以外の目的地は設定せず、土産は買わず、なんだかいつもと変わらない気もするが、安上がりをスローガンに、財布も軽く旅に出た。

 

 

1日目

世の中には「始発」と「真の始発」というものがあって、後者は最寄り駅以外に移動して(もっぱら徒歩で向かう)乗る始発電車を指す。我が家の立地の場合、この2つの間には1時間程度の差が生じるから、目指す場所が遠ければ遠いほど「真の始発」に乗りたいわけである。

さて、今回は兵庫県を目指すから、「真の始発」に乗っても昼下がりの到着となる。となれば早く着くに越したことはない、とド早朝、あるいはド深夜にアラームを設定し、はたしてアラームは鳴り、アラームを確認し、再び事切れた。

「始発」も5時過ぎに出るわけだから十分早いのであるが、2位という位置にいるとどうしてもただひとつの上ばかり見つめてしまうものである。

 

東京駅からは長い長い東海道線に乗る。東海道新幹線が開通する前は東海道線が東京−神戸間を乗り換えなしで結んでいたと思えば、なんのこれしき、と思えなくもないこともないかもしれない。各駅停車ではない、在来線流の「こだま号」なのである。

国鉄の民営化に際して、一本の路線だった東海道線がJR3社による分割管轄となり、また前述の東海道新幹線に高速ノンストップゴーゴー機能を譲って“地方の足”の役割を担ったことで、県を地方をまたいでの長距離列車は姿を消し、どうしても複数回の乗り継ぎが必要となる。昔の記事で詳しく書いたこともあるが、ざっとモデルコースを示すと

 

東京−熱海(静岡県)−静岡(静岡県)−浜松(静岡県)−《名古屋通過》−豊橋(愛知県)−大垣(岐阜県)−米原岐阜県)−《京都・大阪通過》−神戸(兵庫県)《至・山陽本線

 

となる。実際にはもう少し直通事情が良かったり、逆にさらなる乗り換えが必要だったりするが、概ねこれだけの乗り換えを、毎度やっているわけである。また、多くの駅において到着ホームと出発ホームが階段をはさんだ別のものであるから、青春18きっぷのシーズンには終着駅で決死の椅子取りゲームが繰り広げられる。

この東海道線でのポイントは「いつまでも続く静岡県」と「関ヶ原越え」の2点。

前者は、といっても説明するまでもない。東海道線静岡県を東西に横断しており、これがひたすら長いのである。静岡に恨みはないが、いつまでたっても静岡にいる。途中乗り換えは最低でも2回必要で、乗り合わせがうまくいっても2時間半以上は静岡県にいることになる。富士山と浜名湖、たまに見える海以外は景色もそこそこ単調で、先を考えても「寝ておきたい」区間であるから、ここで座れないと少しツラい。東京から西に向かい、富士山を望んではしゃいだあとの、最初の試練である。

後者は、大垣−米原間に設定された本数が少ないために乗り合わせがうまくいかないことが多く、わりと待たされる現象を、この区間内にある関ヶ原駅の名を借りて表したものだ。豊橋から西へは快速や新快速などの優等列車(いわば在来線流の「ひかり号」)が走っており、小駅を飛ばすさまが静岡にすさんだ心の清涼剤となるが、大垣止まりとなれば次の電車まで少し待つことになる。

 

と、東海道線談義に花を咲かせたが、「始発」に乗ったため甲子園に着くのは16時見込みとなった。第四試合の開始予定時刻が15時30分だから、ほとんど見られないことになる。それではもったいない(特にお金が)ので、初日は甲子園に行かず、寄り道をすることにした。といっても特定の施設を目指すわけではない。青春18きっぷはJR線に乗り放題‥‥もうおわかりであろうが、電車に乗って時間をつぶした。

 

時刻は12時、豊橋からの快速米原行き(関ヶ原越えの直通!)を名古屋で下車し、ホーム上にあるきしめん屋で腹を満たした。このまま東海道線で行くのもつまらなくなったので、関西本線に乗り換え、快速亀山行きで三重県を経由。亀山からは1両のワンマンカーで、山稜地帯を抜け木津(奈良県)に向かった。向かい側のホームに来ていた大和路線大和路快速に飛び乗り、奈良を通って大阪方面へ向かう。

途中、久宝寺駅大阪府)で全線開通したばかりのおおさか東線に乗ろうと思っていたのだが、虚ろな顔で電車に揺られていたら乗り過ごした。

そのまま虚ろな顔で16時ごろ大阪駅に到着。さすがに10時間も電車に乗って疲れたらしく、気がついたら改札を出ていた。涼しさを求めて駅ビルを覗いたあと、大阪駅から南を目指して1時間弱歩いた。

 

朝から菓子パン以外なにも食べていないことに気づいた途端猛烈に腹が減ったので、近くにあった安いラーメン屋で「みぞれ肉そば」を食べた。おいしかった、まあこんな状況で食う飯はだいたい美味い。

 

腹を満たしたら今度は歩く気力がなくなったので、大阪メトロ御堂筋線に乗車。東京の複雑怪奇な地下鉄網を把握できているのは、多少電車が好きなどという以前に、単なる「慣れ」でしかないことを痛感した。なぜひと駅ごとに別の路線が接続しているんだ。

 

動物園前駅で下車。アヤうげなおニイさんたちをやり過ごし、新世界をくぐり抜けて少し行った先に、寝泊まり先はあった。

 

 

「04 village なんば」

オープンして数年のホステルである。

 

各階ごとに違うセキュリティコードで管理。

 

二段ベッド4台の8人部屋。空調もあるよ。

 

 下の段をゲット。シーツ敷きはセルフ。

 

水回りもすこぶるキレイ。

 

ドミトリータイプの宿にはそこそこ泊まってきたが、ここまでキレイな宿はあまりない。これで1200円だから、もうすごいとしか言いようがない。体を洗って寝るだけなら、何も不自由しないし。

同室にはスイスから来たというナイスガイと、中国方面から来たと思われる人たちがいた。軽いあいさつを交わす程度で、深く干渉することもなく、ただ同室にいるというだけのつながりが奇妙に心地よく、移動の疲れも手伝ってすぐに眠りについた。

 

1日目の費用:

(朝+昼飯)650円+(夕飯)800円+(交通費)2610円+(宿代)1400円=5460円

 

 

2日目

高校野球は8時から第一試合が始まる。安さを優先して兵庫県ではなく大阪府に宿をとったのもあり、第一試合に駆けつけるのはムリ。第二試合開始の10時を目指すことにした。

朝飯は、一度来たことのある天王寺駅地下の「カフェクレバー」でモーニング。ここのソーセージセットのソーセージは大きくてハーブ風味なのが良い。

大阪環状線大阪駅に出たのち、神戸線甲子園口駅へ。大阪駅の案内板で各駅停車しか止まらない小駅であることを知り、甲子園が近いのになぜと首を傾げたが答えは簡単、「甲子園球場」から遠いから。甲子園口というのは地名。甲子園球場までは徒歩15分ほどだった。球場の目の前に阪神電鉄甲子園駅があり、公式ページでもアナウンスされている。どうせJRしか使えないから、と強がってみる。

 

なんの因果か、レフト自由席に席を構えた。快晴、1回戦からかヒトもそこまでの入りではなく、浜風もあって暑さの中ではあるが快適に過ごした。

 

 

500円で一日中ここから高校野球見られるって、ステキだわー。

 

さて、結果は

vk.sportsbull.jp

こういうのを見てもらうとして、生観戦の良いところは情報が全然入ってこないところだ。

たしかにテレビ中継は、常にいい角度からとらえた映像を涼しい部屋で見ることができる。選手の成績も、地方大会からすべて教えてくれる。それはそれで非常に有意義なことだが、ときおり気になるのが「味付け」である。

高校野球というものは、ドラマ性を帯びている、というのはまあそうなのだろう。人生の少なくない時間を野球に懸けてきた少年がぶつかる。勝ち負けが生まれる。支え、支えられ、築いてきたものも、勝負の世界では報われたり、報われなかったりする。それらがドラマとなり、第三者の心をも打つ。そういうドラマがひとりひとりにある。代表大会に進めなかったものも含め、すべての球児にドラマがある。その総体が高校野球である。なんと美しいことか。皮肉をいいたいわけではない。本心から美しいと思っているし、球児の努力に皮肉であたるほど歪んではいないと思っている。高校野球は、そういうものだ。そして多くの日本人はそれが好きなようで、そのドラマ性にフォーカスした報道もしばしばなされる。特集も組まれる。ドラマ性を掻き立てる実況は語り草になる。

だから、テレビの味付けを責め立てたいわけではないのだ。"物語"と銘打たれたスローガンも、密着取材をウリにする番組も、求められる限りそのままでいいと思う。

あくまで個人的に、という枕をつけて、そういうドラマが多すぎる。‥‥枕をつけても誤解を生みそうなので補足すると、高校野球のドラマ自体を減らせというような極端かつ意味不明な話ではなく、"自分が受け取るには"あまりにもたくさんの思惑が絡み合っているから、"こちらで把握できる程度に受け取る量を"減らそうかな、という話で、個人の範囲に収束するものである。高校野球というエンターテイメントに文句をつける筋の発言は意図していない。

たとえば、応援団で揃えたポロシャツを着て必死に祈るかわいらしい女子高生が映るたび、見ててツラくなる。勘違いしてほしくないが、「〜女子高生」を否定しているわけではない。「〜女子高生」は、誰がなんと叫ぼうとそこに"いる"、いていいとかいるべきといったあらゆる第三者を超えて、"いる"のだ。

 

これを先に言えばよかった気がしているが、自分が見たいのは、結局のところ「上手な高校生が野球をやっているところ」なのであって、ドラマはその"次"、スパイスのような存在なのだ。むろん、プレイのその先にドラマを"見る"ことも多々あるけれど、やっぱり野球があってのドラマなんであって、野球の合間に「〜女子高生」が挟み込まれると、面食らう。野球とともにドラマが進行することはわかっていて、その上で、やっぱりまず野球が見たいのだ。

難しいゴロをさばく内野手とか、技ありの一打とか、人を喰ったような変化球とか、そういうのを見て、唸っていたい。それらはきっと、デッドボールもらってガッツポーズとか、決死のヘッドスライディングとかと同じように、意地と意地のぶつかり合いで、それぞれの人生が衝突した際のエネルギーが、野球のプレイとして発露しているのである。見る側は、野球のプレイを通じてドラマを見たり見なかったりするのだ。

 

話が遠いところにいってしまったけれど、球場で、ずっと同じ場所から試合を見つめている分には、なににも邪魔されず野球が楽しめる。ドラマというのは、その中で適宜見つけたり、想像したりする程度で自分には十分だ。

 

 

14時30分、国学院久我山の攻勢を見惜しみつつ、球場の外に出る。甲子園口駅まで歩く余力はなく、涼しい阪神電鉄の駅に吸い込まれていった。西宮駅からJR西宮駅を目指し(これも全く調べずに行ってみたらワリと距離があってビックリ)、なんとか15時10分西宮駅発の終電に間に合った。終電というのは冗談でなく、乗り換えを一つでも失敗すると東京に戻ってこられなくなるヤツである。ギンギラギンの西日を窓越しに浴びる終電は、ヘンな気分になる。

途中、大津駅で浴衣姿の老若男女がたくさん降りていって、なにかと思って目を凝らせば「びわ湖大花火大会」だったもよう。夜はこれから、今日はこれからといった風情の色鮮やかな浴衣が飛び出していく横を、既に今日を終えた日焼けヒゲ面男を乗せた新快速が通り過ぎた。

 

「終電」は通勤帰りの客でそこそこ混雑し、なんとなく菓子パンの包みを開けられないまま、結局朝飯以来の食事にありついたのは22時台、熱海発品川行きの電車がようやっと静岡県を抜けた頃だった。

ということで、この記事を書き終わる頃には、とうに静岡県を飛び出し、Android版で下書き保存ができないことに失望し、そのまま午前1時過ぎに”最寄り駅”に到着し、40分歩いて家に帰ってふて寝して、また起きて、2日空けただけでなんとも久しぶりな気分でもって、自分の机に向かっている。

 

2日目の費用:

(朝飯)450円+(夕飯)650円+(交通費)2510円+(入場料と飲料費)1400円=5010円

 

しめて、10470円で一泊二日を楽しんだわけだった。

 

テレビで高校野球を見れば、あのまとわりつく熱気を肌が思い出す。涼しい部屋の温度も、少しだけ上がるかも。